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「でもさあ、中学の同級生とこんなして同じアパートで出くわすってのも不思議だよねぇ」
「はっはっは! そうだな!運命的とでも言いたいかい!? でも、僕にはロマンスを求めないでくれ! 僕にはもう妻がいるんだ!」
「ちょっと、何で私何も言ってないのに勝手にフラれたみたいになってんのよ。ふざけんのも大概にしとかないとブン殴るわよ。マジで。つうか、コーヒー結婚してんの!?」
「はっはっは! 当たり前じゃないか! 何なら今度紹介するよ! 素敵なマッスルレディだよ!」
話す中で、最も危惧する事態にもなりそうに無い事も分かり、桜子は自然に笑っていた。
何て言うかさ、こんな友達の出来方も、案外悪くないかもね――
学生時代は無縁だったが、時を越えて現れたくどい同級生のご近所さん。
色々とめんどくさい展開も予想されるが、新しく輪が広かった感じが、桜子には何となく嬉しく思えた。
タバコとコーヒー。
その物語の本当の始まりはこれからである。
「ところでコーヒー、引っ越しはいつだったの?」
「ん!? 変な言い方だな! 明日だよ!」
「明日? だったら蕎麦配るのそれからでも良かったんじゃない?」
「何言ってんのタバコ! それじゃ間に合わないじゃないか! 今度は海外なんだし!」
「何がよ」
「明日にはもうここを出るから、今日配っているんじゃないか! 引っ越し蕎麦だぞ!? おいおい、しっかりしてくれよタバコ! はっはっは!」
「逆だろ逆! 普通は来た時に“宜しくお願いします”の引っ越し蕎麦だろがよ! やっぱりお前はただのバカか!」
「…………マジで!?」
完
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