タバコとコーヒー

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「いや、私は…」 「あ、表札も田端さんだし、やっぱりそうでしょう! 金園(きんえん)中学校だった! えーとほら、何だったか……田端ぁ…………何とか子……そう! 田端何とか子さん!」 「桜子です」 混乱したままとりあえず見切り発車したのが災いし、つい桜子は答えてしまった。 しかし、出身中学は確かに合っている。“キンエン中のタバコさん”とよくいじられていたものだ。 「ほら、覚えてない!? 同級生だった上島! 僕だよ僕!」 特に聞く耳持たずあくまでマイペースに進める男のテンションに飲まれてしまった形の桜子は、とにかく対応を誤らないように冷静になるよう努めるしかなかった。 少なくとも、向こうはこちらを知っている。だとすれば、考えられる事はとりあえず二つ。 この男は本当に中学の時の同級生か、ストーカーか。 後者の場合を考えた時、桜子は血の気が引いていくのを感じていたが、だからこそ冷静であれと、必死に考えを巡らせた。 頼むから前者であってくれと願ってはいるが、誰だかどうにも思い当たらない。むしろ知らない。 となると、あとは後者しか考えつかないが、熱血バカ的ストーカーというのも正直ピンとこない。いや、分からないから恐怖が増すのだ。
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