キラキラ食堂

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羽田空港からレトロな赤の可愛い京急電車に揺られて 一駅ずつ横浜駅に近づく度に高鳴る鼓動。 なんだか顔がニヤけて 徐々にテンションはワクワクからドキドキへと変わる。 待ちに待ったライブの日 お天気も気分も最高! この日の為に生きている私。 欲しいグッズは決めている ファンレターは全てのメンバー宛に準備している。 「着いた~港町駅!」 ここは、ファンクラブ仲間と待ち合わせの場所。 「ムンちゃん!」 濃いピンク色のボブに白いリボンのヘアドレスをちょこんと乗せて 瞳にはブルーのカラコン 白いレースのワンピはゴージャスでとても可愛い。 「かわいい~」 「すぐそこだから、荷物置いて着替えていく?」 イーちゃんの青いネイルの人差し指のその先に そびえ立つタワーマンションが見える。 「わぁ綺麗!」 窓からの眺望は絶景で 川の青と河川敷の緑と街のグレーが光の彼方に続く流線型の模様の様で これから始まる感動への期待となって目に映る全てのものが胸を高鳴らせてくれる。 早速 水色のミニスカワンピの下にガーターベルトと黒い網タイを履いて ウィッグは淡いピンクのロン毛をセットした。 「エロ~ぃ! 入り待ちはダメだって、グッズに並ぶにはまだまだ早いから、横浜でランチしよ!」 横浜のホームに降りると どこからかふんわりと豚肉の香りがしてくる。 「いつもと違う川辺の方に行ってみようか。」 彼女に誘われるままに歩きながら 大好きなミュージシャンと同じ空の下で 同じ空気を吸っている幸せを噛みしめた。 太陽が水面にキラキラ反射した少し肌寒い川辺で これから始まるライブの話は止まらない。 「イーちゃん今日はいっぱい咲こうね!」 二人の妄想の世界は広がり膨れ上がって盛り上がる。 土手でランニングしている人達や 犬のお散歩をしている人や 河川敷ではしゃいでいる子供や 遠くで黄色いジャージ姿の踊る部活らしき集団 みんな思い思いの休日を過ごしている。 どれほどの人達とすれ違ったのか分からないほどぶらぶら歩いていると キュートなお店が見えてきた。 近づいてみると "キラキラ食堂"の看板。 「ここでランチして行こうよ。」 とイーちゃんが扉を開けると 「おかえりなさい!」 そんな掛け声で出迎えてくれた。
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