1人が本棚に入れています
本棚に追加
ここ葉山マリーナで待ち合わせした筈なのに
彼女は来ない。
「あれ?翔太、可愛い彼女はまだ来ないのか?」
「はい、あ、はい。」
職場の先輩に半ば上の空で返事をしてしまった。
あいつ、何しているんだろう。
なんで携帯が繋がんないんだよ。
「なんかあったのかな。」
会えなくてイライラしていた怒りが不安へと変わってゆく。
おっちょこちょいだから、いつも俺が傍で守ってあげないと、またなんかやらかすんだよな。
俺の気持ちと海は真逆で、穏やかにキラキラ輝いている。
「見せたい景色がいっぱいあるのに。」
今日はキラキラ食堂に連れて行く約束してたな。
駅前でお買いものを済ませて
お天気に誘われるままに
気が付けば横浜駅近くの河川敷まで足を延ばして
お散歩していた。
キラキラ汗を流して踊りに励む人達や
犬のお散歩を楽しむ人
皆んな幸せそうできっと悩みなんて無いんだろうな、
「ママ~」
今日こそ伝えなくては、今日こそは、
「ママ~おなかすいた~」
マリーナのチャームが我が子のリュックでぶらぶらと揺れている。
「そうね、どこかでおやつにしましょうね。」
土手を上って暫く歩くと
"キラキラ食堂"の看板。
若い女の子が喜びそうな外観を見上げながら
その扉に手を掛けた。
「何が食べたい?」ギィーと扉を開けると
「おかえりなさい!」
「ただいま~!」
すかさず息子が返事を返すと
店主はにっこり笑った。
最初のコメントを投稿しよう!