キラキラ食堂

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ここ葉山マリーナで待ち合わせした筈なのに 彼女は来ない。 「あれ?翔太、可愛い彼女はまだ来ないのか?」 「はい、あ、はい。」 職場の先輩に半ば上の空で返事をしてしまった。 あいつ、何しているんだろう。 なんで携帯が繋がんないんだよ。 「なんかあったのかな。」 会えなくてイライラしていた怒りが不安へと変わってゆく。 おっちょこちょいだから、いつも俺が傍で守ってあげないと、またなんかやらかすんだよな。 俺の気持ちと海は真逆で、穏やかにキラキラ輝いている。 「見せたい景色がいっぱいあるのに。」 今日はキラキラ食堂に連れて行く約束してたな。 駅前でお買いものを済ませて お天気に誘われるままに 気が付けば横浜駅近くの河川敷まで足を延ばして お散歩していた。 キラキラ汗を流して踊りに励む人達や 犬のお散歩を楽しむ人 皆んな幸せそうできっと悩みなんて無いんだろうな、 「ママ~」 今日こそ伝えなくては、今日こそは、 「ママ~おなかすいた~」 マリーナのチャームが我が子のリュックでぶらぶらと揺れている。 「そうね、どこかでおやつにしましょうね。」 土手を上って暫く歩くと "キラキラ食堂"の看板。 若い女の子が喜びそうな外観を見上げながら その扉に手を掛けた。 「何が食べたい?」ギィーと扉を開けると 「おかえりなさい!」 「ただいま~!」 すかさず息子が返事を返すと 店主はにっこり笑った。
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