キラキラ食堂

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いつもの京急電車に乗って いつもの帰路で 「明日の為に早く寝よう。」 なんて いつも通り思ったけれど 「そうだ、今はいつもとは違う。」 車内で笑う人たち 音楽を聴く人たち スマホを弄る人たち いつもの日常と変わらない人たちとは違う僕だけが一人取り残された気分になった。 車窓から見える夜景の中に白髪混じりの老人が浮かんでいる。 横浜駅で降りて独りぶらぶら歩いていると なんだか人の流れが尋常じゃあない。 仮装とでもいうのだろうか 不思議な出で立ちの老若男女と逆行して歩いている僕。 何故かすれ違う人たちの表情は みんなキラキラと輝いている。 白いワンピースと水色のワンピースの二人の中年女性たちは ひときわ甲高い声でケラケラと笑ってとても幸せそうだ。 寒い夜風に吹かれながら 遠くで光る観覧車と微かな潮風の香りを背に 無意識に職場で思い出を振り返っていた。 "キラキラ食堂"の灯りが見える。 「おかえりなさい!」 いつものお店といつもの店主の笑顔にほっとする僕がいた。 店先には、いつもはいない筈の犬が繋がれている。 「犬を飼ったの?」 「あ~、迷子の女の子が連れてきた迷子の子犬です。もうすぐ飼い主さまがいらっしゃいますよ。」 「迷子の女の子は大丈夫だったのかな。」 「あははは、携帯を落としたそうで、電話をお貸ししたら彼氏がご来店されました。」 メニューを見ているとテーブルからコトンと音がして そちらに視線をやると可愛いピンクのガラスのお皿の上に乗った 小さな小さな苺のホールケーキが現れた。 「秋山さん、お誕生日おめでとうございます。そして、お疲れ様でした。」 言葉を失ってゆっくり見上げると いつもの店主の笑顔に胸がいっぱいになった。 「あ、ありがとう、泣きそうだよ。」 その時、ギィーと扉が開いた。
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