0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうかい。ごちそうさま。じゃあね、あんた」
最初から最後まで俺をあんた呼ばわりした老婆であったが、最後の「あんた」には心が温まるのを感じた。
「ありがとうございました。また来てください」
老婆は手を振りながらコンクリートの地面に足をつけると、たちまち暗闇に溶けていった。
「お前、何持ってるんだ?」と店長が言う。
「え?」
「右手を後ろに隠してるのは何だ?」
自分の心に素直でいようと吹いた老婆の言葉を思い返した。
半分ほどまで短くなった煙草を店長に見せる。
「あのお客様からの贈り物です」
俺はそそくさと煙草をまた口にくわえて老婆の食事を片付けた。
最初のコメントを投稿しよう!