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「そうです。所長の能力みたいなビックリするようなことは、誰かに話したくなるものです。これが大人だと、不思議な現象になればなるほど信じてもらえないと思って口をつぐみやすくなりますが、子供は不思議であればあるほど、友達や親などいっぱいの人に話してくれます。現に、今日の女の子も友達に聞いたと言っていたでしょう?」
「そういえば……」
「報酬を貰うより、無意識の宣伝をしてもらう方が、何倍もいいです。うちの事務所は、お金をかけて宣伝する余裕もないですから」
「なるほど」
結花の説明を受けて納得した仁は、あごに丸めた指を添えてウンウンと頷いた。
「結花ちゃんは頭が良いね。僕は子供が宣伝になるなんて、全然気付けなかったよ」
そう言って、仁は結花の頭を撫でた。
すると、結花は口をパクパクとさせながら、顔を真っ赤にした。
「そ! そんなことないです! これぐらい誰でも思い付きます!」
「そうかな? でも、僕は結花ちゃんがいて良かったよ」
仁がそう言うと、結花はさらに真っ赤になり、黙りこんだ。
そして、ちょうど静かになったところで、鰹節を食べ終わった一匹の猫が、仁の靴に手をかけてニャンと鳴いた。
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