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「え? 鰹節をもう一袋食べたい? ダメだよ。鰹節は一日一袋までって言ってあるだろ? 報酬の残りの四袋は、君の鰹節貯金としてしっかり貯蓄しておくから」
ちなみにこの鰹節貯金は、貯めれば他のものと交換することも出来る。
とある猫は、貯めに貯めて牛肉と交換した。
その日の仁の夕食が、メザシとなったのは言うまでもない。
項垂れて残念そうな猫の頭を撫でながら、仁はため息を吐いた。
「けど、やっぱり、ハードボイルドな探偵になって、どんな難事件もバシバシ解決して、一躍有名ってのもいいよね……」
「所長……」
さっきまで赤い顔をしていた結花は、一転して呆れた顔になった。
「ハードボイルドなんて絶対に無理ですから」
「そんなことないよ」
「そんなことあります。所長は所長に向いている仕事をしていけばいいんです」
「えー」
仁は不満げに口を尖らせた。
「えー、じゃありません」
その後、しばらく押し問答を繰り広げた仁と結花だったが、今度は猫からの依頼が入ってうやむやとなった。
猫と子供の依頼者ばかりで、仁の貧乏な日々はまだまだ続く。
しかし、子供の口コミは確実に広がり、そこからお金に繋がる仕事が入るようになるのだが、猫を使って事件を解決する“猫魔人探偵”として有名になるのは、もう少し先の話である。
end
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