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仁はデスクに置いてあったスーツの上着から、携帯電話を取り出す。
「えーと……。煙草、火がつかない……っと」
検索画面で検索語句を入力し、仁は検索されてきたページを確認した。
「あー……。なるほど。煙草を吸いながらじゃないと、火がつかないのか。よし、今度こそ」
携帯電話をデスクの端に置き、またデスクの上に足をドカッとのせてイスに深く腰掛けた仁は、煙草を口にくわえた。
そして、火をつけたライターを煙草に近付ける。
『煙草に火をつけた俺は煙を深く吸い込み――』
「うえっ! ゴホッゴホッ! 何だごれ!」
慌てて口から煙草を離した仁は、盛大に咳き込んだ。
「ゴホッ。こんなの皆、吸ってるの?」
若干、涙目になりながら、仁は火のついた煙草を見た。
しばらく煙草を見つめてから、仁は煙草から目をそらしてデスクの上にあるシンプルな灰皿を引き寄せた。
この灰皿も汚れ一つない新しいものだった。
「……い、今は煙草はいいや」
火がついたままの煙草を灰皿に置き、仁はゆっくりと立ち上がった。
『煙草を吸っていない時には、カフェインが取りたくなるのが俺の常だ』
ドアの壁伝いに設置されている棚に緩慢な動作で近付き、足に擦り寄る三匹の猫を無視しながら、仁は棚の荷物台に置いてあるコーヒーメーカーに向かって立つ。
コーヒーメーカーの中には、すでにコーヒーが出来上がっていた。
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