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マグカップと結花が持っていたスーパーの袋をその荷物台に置き、結花は袋の中のものを取り出して、それをコーヒーに入れ始める。
「砂糖は三個。牛乳はたっぷり」
棚の引き出しからスプーンを出し、結花はコーヒーを混ぜる。
そして、混ぜ終わったマグカップを持って、結花は仁の所へ戻ってきた。
「はい。所長好みのコーヒーです」
仁は結花からマグカップを渡された。
マグカップの中のコーヒーは、黒から柔らかな色合いの薄茶色へと変わっていた。
「無理することはないんですよ? 所長には所長の良いところがあるんですから。所長にあったお仕事をしていきましょう」
手に持ったマグカップから、じんわりと温かさが伝わってくる。
「……うん」
仁は素直に頷いていた。
「じゃあさっそくお願いします」
「え?」
「所長のまぬけな姿を見られると困るので、依頼者にドアの外で待ってもらっているんです」
そう言うと、結花は仁にあっさりと背中を向けて、ドアの方に行ってしまった。
「お待たせ致しました」
結花がドアを開けると、小学生ぐらいの女の子が入ってきた。
女の子は今にも泣きそうな顔をしていた。
「花ちゃんが……。花ちゃんがいなくなっちゃったの……」
「まさか誘拐!」
「違います」
仁の言葉へ結花が即座に突っ込む。
「花ちゃんの写真がこちらです」
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