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すでに女の子から預かっていたのか、仁は花ちゃんが写っている写真を、結花から受け取る。
そこに写っていたのは、黒い毛並みの子猫だった。
「窓を開けたら花ちゃんが逃げちゃって……。もうすぐ雨になりそうなのに、探しても全然見付からなくて……。猫を見付けるのが得意な人がいるって、友達が言ってたのを思い出してここに来ました。お願いします。花ちゃんを見付けてください!」
女の子の大きな瞳には、涙が溜まっていた。
「さあ、所長にあったお仕事ですよ。雨が降る前に、花ちゃんを見付けてあげましょう!」
結花がこぶしを作って気合いをかけた。
「探すけど……。なんか釈然としない」
仁は最後の方を小声でブツブツ言いながら、マグカップをデスクに置き、デスクの横にあった拡声器を掴んで、事務所の窓を開く。
そして、拡声器を外に向け、仁は一声鳴いた。
「ニャーーーン」
すると、ビルの表に次々と猫が集まりだした。
ビルの前の道路をたくさんの猫が埋めていく。
結花に促されて窓のそばに来ていた女の子は、その状況を見て目を丸くしていた。
涙も引っ込んだようだ。
「所長は猫と意志疎通が出来るんですよ」
「凄ーい……」
窓の外の光景に釘付けになった女の子は、感動の声をもらした。
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