炬燵の柱

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「あれ~? 木兎は~?」  コート内に居ないエースに、マネージャーの白福は不思議そうに訪ねる。  いつもならテンション高めに飛び回っているはずなのに、と。 「木兎さんなら、早退しましたよ」 「早退~?」 「腹壊しちゃってね。急遽近くの病院行ってんだよ」 「昼に食った弁当があたったみたいです」  赤葦と木葉が説明すると、白福はやれやれ、と肩をすくめた。 「まったく~、うちのエースは何やってんだか~」  木葉は木葉で、ニヤニヤしながら言う。 「居ないと静かでいいよなぁ」 「それ、本人に言うとしょげますよ」  赤葦は流れ落ちる汗を拭きながら木葉を諌めるが、木葉は更に口を出す。 「赤葦はテンション高めの練習に毎回付き合わされて、たまに『ウザい』とか思わねえの?」 「あ~、たまに思いますけどね……」 「けど?」  赤葦の思わぬ返しに、木葉と白福が揃って首を傾げた。  そんな二人を見て、短く息を吐くと 「あんなでもエースだから、居なくちゃ困る」  とさらりと言ってのけた。  木葉は苦笑して、確かにな、と呟くと、赤葦の肩を軽く叩く。 「それ本人に言うなよ。本気で調子にのるから」 「本人が居ないところでしか言いませんよ」  ウザいから、としれっと言う赤葦に、木葉と白福は瞠目し、すぐに揃って笑い出した。  うちの亭主と炬燵の柱  なくてはならぬがあって邪魔
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