エンプーサ

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エンプーサ

「ギリシャ神話に出てくるエロい怪物知ってる?」  仲山理香は大輔に胸を揉みし抱かれながら言った。D大学をやめて放蕩した生活を送っていた。  大輔はミソロジーゼミ時代の後輩だ。大輔も教授たちの罠にかかり、荒廃してしまった。 「ギリシャか1度行ってみたいな。ンッ、リカさんのココすごい濡れてる」クチュクチュクチュ。  大輔は夕凪CITY西エリアにある屍鷹建設に勤めている。現在、東エリアの工場跡地にデザイナーズマンションを建設し、売りに出す構想が練られていた。 「来月から管理者になれる。そしたら結婚しよう」  大輔は理香のナカで達した。  社会人経験の少ない大輔は屍鷹の目論見など知るよしもない。  労働基準法41条に、《管理監督者は労働時間・休憩・休日は規定外》というルールがある。  過酷な残業の嵐が待ち構えていたのである。グハハハハハ。  理香はエンプーサという怪物に憧れていた。鳥や蛇に姿を変えて目的地に侵入し男性を誘惑するのである。  大輔と散歩に出掛けた。崖の下に貫通洞がある。ゴミ集積所として使われるが、恋人たちのホテルがわりにもなる。  理香は大輔の固いものを舐めた。熱いジュースを迸らせた。洞窟の中を進むと滝が流れ、琵琶の像と蛇の像が置かれてある。中はヒタヒタに濡れている。  琵琶の像のところに誰かが倒れていた。口をパックリ開け、白眼を剥いていた。  妙齢の男性でブクブク太っていた。ワイシャツは血で真っ赤に染まっている。    山内剛三 夕凪図書館館長 死亡
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