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憎悪
俺は興奮していた。あの司書の兄ちゃんが殺されちまった。さらに館長も洞窟の中で殺されていたらしい。
野毛にあるビリヤード場で友人とナインボールで遊んでいた。
「司書って給料安いんだろ?大変だよね」
スクラッチして郡司は溜め息を吐く。
「殺ったのはあのホームレスだ。いいネタになるな」俺は郡司のミスを指差して笑った。
「灰島って本当に嫌な奴だよね?」
「光栄です」
この名前のせいで嫌な思いを随分した。『蝿島』『蝿寄るな!』何度言われたことだろう。
郡司はストゥールに腰掛け、シャンディガフを飲んだ。佐々木の恐怖に歪む顔を思い出し、噴き出しそうになる。
奴は郡司の人生を狂わせた張本人だ。郡司はかつて派遣会社で働いていた。
グロール電子っていうブラック企業で働いていたのだが、社内で盗難事件が発生した。
人事担当の、猿山ってゆう狡そうな奴に呼び出され。『君がやったっていう噂があるんだ』と、北関東独特の語尾が上がる口調で問い詰められた。
郡司は警察に引き渡され、佐々木の陰湿な取り調べに屈して刑務所に入るハメになった。
年越し派遣村が話題になった頃の話だ。冤罪であることはすぐに明らかになったが、職を失い、婚約者にまで逃げられた郡司にとって、グロールと派遣会社、そして警察に復讐することが糧になった。
『やっと会えたな?佐々木よ?』
ドリルのスイッチをカチンカチンいじる。小刻みに尖端が回転する。夕凪海岸に白波が立つ。
『あっ、あのときのことは、わっ、悪かっ…』
ウィンウィッ、ウイッ…ウィ~ン。奴の顔面ギリギリにドリルを近づける。
『うるせ~よ、おめぇの娘、早稲田に通ってるよな?上から目線でムカつくんだよな、あいつら…美穂ちゃんだっけか?犯してもいいか?』
『ふっ、ふざけるな!娘には何のつっ、罪もないだろ?』両生類みたいな佐々木の顔は涙で汚れてる。
『俺とおんなじ目に遭わせてやろうか?それが嫌なら1億用意しろ。期限は1週間…短すぎるか?出来るよな?可愛い娘のためなら』ウィ~ン!!
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