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クラインエアーデ
草木も眠る丑三つ時、遺体安置所で藤平はウツラウツラしていた。ガタン、妙な音がしたので振り向くと山内の死体がケースの中から起き上がった。
怪奇現象でも何でもない。棺の中の温度が冷却されると死体が膨張しゾンビ現象が起きるのだ。
死体をケースの中に戻す。それにしても、1日で2件のコロシが起きるとは。
倉林は派遣会社から夕凪図書館に送り込まれた人物だった。文化系の派遣会社らしく、クラインエアーデという東京にある会社だ。
クラインの壺のクラインではなく、Klein《ドイツ語で小さな》Erde《ドイツ語で地球》という由来から来ている。
司書の他に学芸員や教員なども派遣している。今や自治体も財政難で派遣で賄う時代となった。
籠山櫂は夕凪コンビナートを眺めていた。蛾の飛来を抑制するためのナトリウムランプが闇をオレンジ色に染めている。パイプやダクトが張り巡らされ、まるで城塞のようだった。
西澤の事件で中出塾は大揺れだ。問題児の風馬星司が疑われている。小田原にあるチーマーのヘッドだ。俺のために犠牲になるんだ、感謝しろ。
明日から房総にある天陣学園に赴任することとなった。クラインエアーデに拾われてよかった。
北条はさんざめく夜空を眺めていた。クラインエアーデを設立し5年になる。かつて、タックスタワーと呼ばれた塔を睨みつける。
かつては教育とは無縁な業界にいた。北条の父親は植物工場を経営していた。バブル崩壊により人材を大幅に削減、御曹司である義夫は派遣会社の設立に踏み切った。
窒素肥料への対応にも迫られた。窒素肥料によって産み出されるニトロソアミンは発ガン性物質として問題視されてきた。
漸く軌道に乗りはじめたと思ったら東日本大震災、そしてTTPだ。過労で父親が死去、撤退を余儀なくされた。
戦国時代から覇権を争ってきた里見氏が塩を送ってきた。『学園経営に行き詰まっている、力を貸してほしい』これが、クラインエアーデ設立のきっかけだった。
キラリン、夜空が光った。流星!?本能寺の変の寸前、紅い箒星が目撃されているが…。
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