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最初の犠牲者
ピヤフーカは、信販会社と介護事業所を子会社化することに成功した。金原は約20億円の架空売上を計上した。両者の預金を自社の売上に付け替えた。
派遣切りとかで、多くの人間が苦しむなか金原はsexに勤しんでいた。
金原の祖父は昭電疑獄に絡んでいた。三菱・三井の石炭山を糧に、黒ダイヤを抽出し、いわゆる傾斜生産方式により大増産をしたのである。
結果的に芦田内閣を総辞職に追いやった、この疑獄事件の使途不明金は、約3億5000万。ピヤフーカは、その黒い金により産み出されたのである。
山一証券しかり、カネボウしかり、この手の事件は破綻すると発覚するケースがほとんどだ。
2012年12月13日
夕凪シティの高級自宅街で殺人事件が発生した。
夕凪署強行犯係の御堂刑事は、現場の惨状に吐き気をもよおした。
死体はリビングに転がっていた。エプロン姿なので女と判断した。死体には首がなかった。
首は無惨な姿で暖炉の中に押し込まれていた。
モルグ街の殺人を模倣したのだろうか?
犯人は快楽殺人犯だと、御堂は思った。さらに、現場から面白いものが見つかった。
ドイツ製の旧式拳銃ベルグマンM1896。商業的には失敗した銃で、マーズピストルはベルグマンが派生したものである。
ベルグマンは書斎の棚に飾られていた。女が鑑賞用として持っていたものだろうか?
「何にしても、普通の主婦ではなさそうですね?」
後輩の高城刑事がベルグマンのシリンダーをいじる。「使われた形跡はなさそうですね」
司法解剖の結果、被害者は滝川麻美、32歳と断定された。滝川邸の隣にある、杉谷邸を聞き込んだところ麻美は美容室を経営していたことが分かった。
情報をくれたのは小百合夫人だった。40代の清楚な女性だった。御堂は小百合とメルアドを交換した。
美容室は海岸沿いにあった。ドレッドヘアーの理容師が麻美の死を知り、嘆いていた。
「チーマーだった俺をここまで育ててくれたんです」
麻美には複数の男がいたことが分かった。そのなかの一人が同業者であることを知った。彼なら拳銃と関わりがある。容疑者リストの中に入れた。
トイレの中から声がした。キャハハッと、女の声がした。ベルトが外れる音がした。
「don't touch my junk!」
男性の悲鳴がした。
俺のイチモツに触るなと、彼は言っています。
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