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フィクションとリアルの間で
「作品の中だからって、こんなことして心は痛まないですか?」
編集マンの山名汐里に叱られた。
「何故、あなたにそんなことを言われないといけないんだ!?」
「麻美さんって人に何の恨みがあるんですか?」
「いやいや、これフィクションだし」
「いろいろ嫌なことがあったんでしょ?夕凪町って実在しますよね?そこで何かあったんじゃ?」
「ハハッ?じゃあ何か?太陽にほえろ!を書いている人は、新宿で嫌なことがあったってのか?七人の刑事がベースでしょ?」
「そんなこと言い切れますか?」
「何?俺が盗作したとでもいいたいわけ?」
「はい!夕凪LOVEstreetのパクリですよね?」
「いやいや、全然ストーリー違うし?じゃあさ、あすなろ白書は、東京ラブストーリーのパクリになるの?東京を舞台にした恋愛なんて5万とあるぞ?」
「夕凪って地味なところだし」
「ひどいなぁ、人の故郷を馬鹿にして」
「ズボシだ!ヤッパ、マサキ君だよね?」
俺は目をシパシパさせた。あれ?才谷汐里じゃないか?昔、近所の豆腐屋に感じの悪い女の子が住んでいました。その子は会うたびに膝カックンをしてきました。
「シオリン!?」
「よく、家族ゲームごっこして遊んだよね?」
家族ゲームは松田優作主演のコメディ映画だ。家庭教師として派遣されるが、最後にゴタゴタになり優作がちゃぶ台をひっくり返すシーンは印象的だ。
「真似してベスパ買ったんだけどさ、壊しちゃった」
「探偵物語か~」
汐里が、badCityを口ずさむ。
「バットバット、ファット、シティバット」
「やめろ音痴、耳が腐る」
「ひっど~い、マサキ君って昔からデリカシーないよね?」
「音痴知新だ、酒でも飲もうよ」
「温故知新でしょ!」
俺たちは神保町に移動した。様々な本屋が立ち並ぶ。ビブリオじゃない、ビブリアな街だ。
ビブリオじゃ胃腸炎だよ。下痢を起こすコワーイバイ菌だ。
泡盛にビール、スコッチたらふく飲んだ。
トイレでシオリンの背中をさすってやる。まるで妹みたいだな。シオリンがくるりと振り返った。
「ねぇ、舐めたい」
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