DVDの事件簿

1/1
前へ
/14ページ
次へ

DVDの事件簿

 倉林の生首を見て郡司は吐きそうになった。見つかったのは首だけだ。まぁ、どうでもいいや。  刑事なんてもう辞めてやる!バカな女のせいで郡司の生活はメチャクチャだ。  帰ったら蹴り飛ばしてやる!  生首を見て郡司は分かった。頭の悪そうなガキだ。  夕凪警察署の遺体安置所は不良刑事の溜まり場だ。芹沢刑事がこちらを見てくる。 「あぁ、ソープ行きてぇな」 「性病クリニック行っとけや」  倉林の生首でサッカーの練習をしてたら、鑑識係の藤平に叱られた。 「遺族の気持ちを考えろ!」  うぜーな、おめぇが生首になりゃあいいのに。そう郡司は思った。  刑事部屋に戻ると、刑事課長の奈良四朗が老眼鏡越しに2人を睨みつけていた。 「早く図書館に行けよ、ゴミども」  奈良を、八つ裂きにする妄想をしながら地下駐車場に向かう。  ワゴンRに乗り込む。郡司の自家用車だ。太陽にほえろ!なんかでカーアクションがあるが、パトカーをガンガン飛ばせるのは機動捜査隊くらいだ。  郡司たちも支給されることはされるが、自家用車を使っちゃいけないってルールはない。 「どこに行くんだよう?」  助手席で芹沢がコーンポタージュの缶をフリフリする。「しっかしウマイな。いい時代だよ」  芹沢の正体は芹沢鴨っちゅう、幕末の悪党だ。  郡司がイグニションキーを捻る。ガガガッ! 「近藤勇って口がでかいんだろ?」  新撰組のボス、近藤勇は芹沢の部下だった。 「あぁ、エラが張っててさ、おまけに臭いんだ」  地獄に堕ちた人間は、悪人をたくさん殺さないと現世に戻れないらしい。  地下駐車場を出る。春の青い空が広がる。 「マジで?智子の奴、ボコボコにしてやるよ」  トドみたく醜く太った妻を思い出し、ムシャクシャする。 「好きで愛したんだろう?そりゃないよ。DVDって呼んでもいい?」 「なんじゃそりゃあ?」 「ドメスティックバイオレンス刑事」  芹沢には昔、お梅って愛人がいた。壇蜜を彷彿とさせるエロい女で毎晩求めてきた。人間として最低な芹沢を優しく慰めてくれた。  土方歳三や沖田総司によって無惨に殺されてしまった。全ては己の身勝手さ故だ。  海岸沿いにワゴンRを停める。ホームレスがこっちに歩いてくる。夕凪警察署のOB、佐々木元刑事だ。トレンチコートが風にはためく。  佐々木を拉致って、車内で拷問した。 「昔は世話になったな?佐々木よ」  ドリルをウォンウォン鳴らし、郡司は冷たく笑った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加