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DVDの事件簿
倉林の生首を見て郡司は吐きそうになった。見つかったのは首だけだ。まぁ、どうでもいいや。
刑事なんてもう辞めてやる!バカな女のせいで郡司の生活はメチャクチャだ。
帰ったら蹴り飛ばしてやる!
生首を見て郡司は分かった。頭の悪そうなガキだ。
夕凪警察署の遺体安置所は不良刑事の溜まり場だ。芹沢刑事がこちらを見てくる。
「あぁ、ソープ行きてぇな」
「性病クリニック行っとけや」
倉林の生首でサッカーの練習をしてたら、鑑識係の藤平に叱られた。
「遺族の気持ちを考えろ!」
うぜーな、おめぇが生首になりゃあいいのに。そう郡司は思った。
刑事部屋に戻ると、刑事課長の奈良四朗が老眼鏡越しに2人を睨みつけていた。
「早く図書館に行けよ、ゴミども」
奈良を、八つ裂きにする妄想をしながら地下駐車場に向かう。
ワゴンRに乗り込む。郡司の自家用車だ。太陽にほえろ!なんかでカーアクションがあるが、パトカーをガンガン飛ばせるのは機動捜査隊くらいだ。
郡司たちも支給されることはされるが、自家用車を使っちゃいけないってルールはない。
「どこに行くんだよう?」
助手席で芹沢がコーンポタージュの缶をフリフリする。「しっかしウマイな。いい時代だよ」
芹沢の正体は芹沢鴨っちゅう、幕末の悪党だ。
郡司がイグニションキーを捻る。ガガガッ!
「近藤勇って口がでかいんだろ?」
新撰組のボス、近藤勇は芹沢の部下だった。
「あぁ、エラが張っててさ、おまけに臭いんだ」
地獄に堕ちた人間は、悪人をたくさん殺さないと現世に戻れないらしい。
地下駐車場を出る。春の青い空が広がる。
「マジで?智子の奴、ボコボコにしてやるよ」
トドみたく醜く太った妻を思い出し、ムシャクシャする。
「好きで愛したんだろう?そりゃないよ。DVDって呼んでもいい?」
「なんじゃそりゃあ?」
「ドメスティックバイオレンス刑事」
芹沢には昔、お梅って愛人がいた。壇蜜を彷彿とさせるエロい女で毎晩求めてきた。人間として最低な芹沢を優しく慰めてくれた。
土方歳三や沖田総司によって無惨に殺されてしまった。全ては己の身勝手さ故だ。
海岸沿いにワゴンRを停める。ホームレスがこっちに歩いてくる。夕凪警察署のOB、佐々木元刑事だ。トレンチコートが風にはためく。
佐々木を拉致って、車内で拷問した。
「昔は世話になったな?佐々木よ」
ドリルをウォンウォン鳴らし、郡司は冷たく笑った。
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