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「そうかい、それは辛かったろうねぇ」
今日の一部始終を話し終えるとおじいさんは静かにそう言った。
「辛かったのはきっと私じゃないですよ」
おじいさんの優しい言葉をそっと否定する。
だって私はアドバイスをくれようとした子にひどいことを言っただけ。
仲良くなりたいと思っていた分辛くないわけでもないけど、それは自業自得だから。
「そうかい。それで、お客さんはどうしたい?」
おじいさんの言葉にハッとした。
私はどうしたいのだろう。
「分からないです。謝りたいとは思いますけど……
あの子は私と話してくれますかね?」
仲がいい友達ならまだしも、普段はあまり話しもしなかった子だもの。
嫌われていてもおかしくないと思う。
明日、どんな顔をして会えばいいのかも分からない。
「お客さん、ちょっと昔話をしてもいいかな?」
コクりとうなずくと
「ありがとう、それじゃあコーヒーでも飲みながら聞いておくれよ」
と笑っている。
私は
「ありがとうございます」
と言ってコーヒーに口をつけた。
そんな私を見ておじいさんは少し遠くを眺めて口を開いた。
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