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おじいさんの昔話は、なんだか今の私ににている状況だった。
一人の若い調理師が別の調理師とお客さんに出すコーヒーのブレンドの豆の種類で口論したという話。
すれ違ったまま別れてしまい一人悩んでいたらしい。
私はいつしか、おじいさんの話に聞き入っていた。
区切りのいいところまで話すと、私の空になっていたコーヒーカップを見たのだろう。
「おっと、コーヒーが無くなってしまっているね
おかわりを淹れようか」
そう言ってコーヒーを淹れようとするおじいさんに
「いえ、大丈夫ですよ」
と声をかける。
そうかい?と少し残念そうなおじいさんの仕草にちょっと笑ってしまった。
「それで、その調理師さんはどうしたんですか?」
私の言葉におじいさんは優しく微笑んでまた話し始めてくれた。
若い調理師は悩みに悩んで謝りに行ったらしい。
顔も会わせづらかったが、そのままでもダメだと思ったし、そのときに自分のブレンドにも考えがあったとしっかり伝えたんだとか。
「それで、相手の調理師さんはなんて?」
私の疑問におじいさんはおかしそうに笑って言った。
「それがね、笑いながらこう言ったのさ《またケンカしよう》ってね」
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