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帰ろうとドアノブに手をかけたとき、この喫茶店に入った理由を思い出す。
「あの、私道を聞きたくてここに入ったんです」
なんだか今更な気もしたけれど聞かないことには帰れない。
「それなら、心配いらないよ
そのドアをくぐってごらん」
心配いらないとはどういうことなのか?
あのおじいさんがそういうのだから、そうなのだろう。
「わかりました。ありがとうございます
……コーヒー、美味しかったです」
私はそう言い残すと
言われるままに喫茶店のドアをくぐって外へ出た。
不思議なことに、外に出ると見慣れた景色が広がっていた。
通いなれた学校への通学路。
「……え?」
どうなっているんだろう?
さっきまで見ず知らずの場所にいたはずだった。
おじいさんに聞こうと振り替えると出たばかりのはずの喫茶店の姿が見当たらない。
「……夢でもみてたのかな?」
なんて呟いてみるものの
手元に残ったランタンが、夢でなく現実だったことを静かに主張していた。
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