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たった一度でいい。 許してくれるだけでいい。 愛した人と共に外へ出ることを。 一生に一度のわたしの我が儘を。 たった一度、許してくれるだけで。 それだけで良かったのに。 『お前の現世への未練を絶つには指を持たせるだけでは足らぬ。その目でよく見ていろ、巡』 それさえも許されないのなら。 わたしだけを裁けばいい。 どんな痛みにも耐えられる。 あの人と交わした約束が、わたしを暗闇の恐怖から守ってくれる。 ……なのに、なぜ。 『これが、お前の軽はずみな行動が招いた結果だ』 なぜ貴方は、その方を殺めてしまったのか。 『あ……ああ……』 身体から断たれた彼の頭。 わたしを見ていた優しい笑みのまま、彼はもう二度と喋らない。 『……ああ……』 『巡。お前が蒼介を追い詰めた。お前が殺したのだ』 『わたし、が……』 わたしが彼をころした。 わたしが彼を愛さなければ。 わたしが彼と出会わなければ。 わたしが彼と約束をしなければ。 彼は、死ななかったのに。 『巡。お前は犯してはならぬ罪を犯した。だがお前の最期はこの私がしっかりと見届けてやる』 ……わたしのせい。 わたしの。 わたしの…… ……せい? 『………』 どうして。 なぜ、わたしだけが。 わたし一人が。 どうして。 『!……な、巡!なんのつもりだ!』 憎い。 貴方が憎い。 親とも呼べぬ貴方という人が。 蒼介さんの命を絶った貴方が。 誰一人助けてくれなかった貴方たちも。 指を奉るだけで安易に人との絆を絶つ人たちも。 憎い。 なにもかも。  す べ て が 憎 い  『巡!やめろぉ!!』 『貴方が……貴方たちが招いたこと……みんな』 一人残らず。 『……呪い殺してやる』 望み通り、断ち切ってあげましょう。 貴方の小指と一緒に。 貴方ごと。 それでもう二度と、会わなくなるのだから。
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