一回目の満月

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それはとても綺麗な満月の夜。 18連勤明けの社畜プログラマー橘紀邦は、会社を出てふと見上げた月を眩しげに目を細めた。ああ、徹夜明けの朝日並みに破壊力のある光量だ。今すぐにでも倒れ込んで眠りたいが、こういう時は意外に寝付けない、連勤テンションとでもいうか。 「呑んで帰ろ、」 酒の力を借りるのがいい。そういうものだ。 明日は昼過ぎまで寝て、それから一週間も延滞しているDVDを返しに行って、また朝まで寝て、起きたら出勤、社畜の短い休息は終わりだ。 我ながらなんとも最悪な生活をしているものだと思う。 最悪な食生活でもあるのだが、改善する努力はあまり感じられず、実際地下鉄を数駅乗って適当に居酒屋に向かう。酒はそこまで得意ではない、でも呑みたい気分なのだ。地下にある店まで階段を降りながら何を頼もうかと考える。空きっ腹にアルコールは悪酔いの原因になるから何かつまみでも、あとで胃もたれするかもだが、唐揚げとかこってりしたものがいいな、とか思いながらドアを開けた。
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