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長い指が、煙草を一本抜き取る。
色気に満ちた男の仕草に、水野は目を奪われていた。
ライターにこだわりはないらしい。ワンコインで買えそうなライターで、煙草に火を点ける。
「一条さん」
声をかけると、彼は視線だけでこちらを振り返る。
「作家さん、いらしてますよ」
「分かった」
火を点けたばかりの煙草が惜しいのだろう。彼は、すぐには動こうとしなかった。
「煙草、少し控えた方がいいんじゃないですか?」
煙の中にいる彼に、呆れた顔をして見せると。
「それは、後輩として?」
それとも、と彼が笑う。
「恋人として?」
全く、この男は。
「両方です」
水野は彼を上目遣いで睨み付けた。
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