第1章

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「私ね、クラスをまとめなきゃって躍起になってたのね。で、運動会のクラス対抗リレーが良い機会だって思って、マジ、頑張ろうって思ったわけ。でも何かすごく空回りしちゃって、私が必死になればなるほど、クラスがバラバラになる感じがしたのね。」  野崎が話し続ける。  俺が通っていた学校では運動会の時に6年生全員参加のクラス対抗リレーがあった。一クラス35人全員が走るとなると結構時間がかかる。それでも伝統とかで、毎年行われていた。野崎はクラス対抗リレーで優勝するために、練習をしようとクラスメイトに呼びかけた。真っ先に反対したのは、中学受験組だ。奴らは、「そんな暇はない」と、全く協力しなかった。練習に参加しても、山田達はちゃかすばかりで真面目に練習はしない。野崎はなんとか全員真面目に練習させようと一生懸命だった。しかし、一生懸命になれば、なるほど、クラスメイトの心は離れていく。  ある日、俺は学校帰りに親戚の家によることになっていたので、いつもと違う道を歩いていた。すると、少し前を歩いている野崎を見つけた。いつもの颯爽という感じではなく、とぼとぼと歩いている。普通の速度で歩いたのでは野崎を追い越してしまうので、俺もゆっくりと歩いた。しばらくすると、野崎は立ち止まった。肩が震えている。泣いているようだ。俺は困惑した。いつも自信満々の野崎が泣くなんて考えられない。それより、どうしようか…。このまま黙って通り過ぎるわけにはいかないし、かといって彼女が泣き止むまで後ろで待ってるわけにもいかない。俺は悩んだ末、勇気をだして声をかけてみることにした。 「どうした?」  と俺が声を掛けると、野崎はハッとして俺を見た。野崎としては誰にも見られていないと思っていたに違いない。気まずい空気が流れたが、野崎は他に人がいないのを確認して話し始めた。 「私、クラス委員向いてないのかな? クラス対抗リレーとか皆どうでもいいのかな? どうやったらクラスがまとまるのかな?」  野崎は目に涙を浮かべて俺に聞く。俺はどう答えて良いのか分からなかったが、何か言わなければこの場が収まりそうにもないので適当に、思いつくままにしゃべった。 「あの時、私、もういっぱいいっぱいで泣いちゃったの。そしたらコバタ君が声かけてくれて、メチャクチャいいアドバイスしてくれたの。覚えてる?」
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