第1章

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 リビングで子どもが原稿用紙を前に頭を抱えている。妻が子どもに「看護婦さんとか保母さんとか、何かないの?」と聞いている。子どもは頭を振る。原稿用紙の一行目に『将来の夢』と書かれている。  俺はなるほどっと思い、 「将来の夢がないなら、ないって正直に書けばいいよ」  とアドバイスする。妻は驚いて、 「え? そんなこと書いたら先生に叱られるんじゃない?」  と言う。俺は、 「そんなことないよ。今は夢がなくても、一ヶ月後にできるかも知れないし、ずーっと先かも知れない。今、夢がないって事は逆に無限の可能性があるってことさ」  とちょっと気取って言ってみる。  妻は呆れた顔をしたが、子どもは「そっか!」と嬉しそうにいい、原稿用紙になにやら書き始める。  今の俺の夢はこの家族の幸せを守ること、だ。その為に微力だが頑張っている。
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