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少女は一人、雪の中を歩く。
自分の足音が聞こえなくなるくらいに積もった、パウダースノーを踏みしめて。
ただ聞こえるのは、自分の呼吸音と、──雪の降る音。
その音の美しさに、また少女は足を止める。
──なんて、綺麗なんだろう。このままずっと、雪の音を聞いていたい──
少女はそう思ったかもしれない。
もしかしたら、この真っ白な世界に心を奪われ、立ち尽くしているだけかもしれない。
雪原は、遥か彼方まで続いている。
一面の銀世界に、ただ一人、存在を許されている少女。
見渡すかぎりの雪原に、少女以外の足跡はない。
自分だけの、宝物。
──きっと、この雪原は。
──きっと、この世界は。
──神様が私にくれた、最初で最後の宝物なんだ──
少女はそう思ったに違いない。
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