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少女は思う。     ──なんで誰もいないのだろう。   ──なんで私しかいないのだろう。         この白銀の世界に、ただ一人。       それに、ひどい優越感を感じた。   それに、ひどい悲しみを感じた。       辺りを見渡す。     雪原のみ。人は見当たらない。     ──やっぱり私だけ。       ──どうして。     検討もつかない。       ただ、少女は──素直すぎたのだ。         ──なんとか逃げろ。     少女の父親は言った。     ──あなただけでも生き延びて。     少女の母親は言った。         だから少女は生きている。     だから少女だけ、──生きている。
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