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「で、調子の方はどうなの?」
「浮気調査が3件、身辺調査が2件、警察からの依頼が1件」
「結構繁盛してるじゃない」
「探偵の類いの職業ほど、繁盛を素直に喜べない職業もないがな」
「それは言えてるわね」
この女店員、三好直子とは古い付き合いだ。中学の頃からだからもう20年は経つだろうか。
祖父の店を継いだ彼女だが、商才があったようで、客の入りはそれなり。客がいないのは、開店前のこの時間くらいだろう。
「……独り言多いけど、大丈夫?」
どうやら口に出していたようだ。直子が訝しむ。
「元からだろう。大丈夫だ」
「元からだけど……最近、やけに多いわよ。アンタの近所の人も、独り言が多いって不審がってるんだから、程ほどにしなさい。元から怪しいんだから」
「何だ?心配してくれてるのか?」
「だ、誰が!アンタに悪い噂つきまとったら、通ってるこの店にも悪い噂がつきまとうかもしれないじゃない!店のためよ、店のため!」
なるほど。これがつんでれ、というやつか。興味深いな。今、抱えてる問題を解決したら、調べてみてもいいかもしれない。
「すまないな。少し今、込み入った問題があってな。その解決策を呟いていると、どうも独り言になりやすくてな」
「……。ま、深くは聞かないけど。困ったら頼りなさいよ。アンタ、一人暮らしなんだから、他に頼れる人もいないでしょうし」
「何を言っている?カオリがいるだろう」
「それアンタの飼い猫でしょうが!!」
……――。
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