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――……。
喫茶店を出た後、経営する探偵事務所へと向かう。
少し溜まっていた仕事を幾分か進め、今後の方針について部下と打ち合わせをし、退社する。
夕飯の買い出しもしているうちに夜になり、俺は帰宅の途につく。
薄暗い街灯。人気のない通り。通い慣れた道だが、なかなか不安へと誘う道だ。
タッタッタッタ
後ろから、人の走る音が聞こえる。こんな時間に、ジョギングだろうか。あまり気に留めず歩く。すると、
ドンッ
後ろから、鈍い衝撃が走った。
「……お命、確かに頂戴しました」
少女らしき声が聞こえる。その少女は、そのまま何事もなかったかのように、走り去ろうとする。
「待て」
「にょっ!」
ナイフに刺された訳でも、命を奪われた訳でもなく、単純に体当たりをされた俺は、少女の手をつかみ、動きを止める。
「にへへへ……やっ」
「やっ、じゃない。お前は何をしている」
「いやー、ご主人様の帰りが遅いから心配しちゃって」
「帰りが遅いのは、どっかの誰かがこれが欲しいと喚いていたからなんだがな」
スーパーの袋から、マグロの刺身を見せる。
「にょにょっ!?まぐろ!!食べたい食べたい!!」
「家に帰ってからだ」
騒ぐ少女を連れ、我が家へと向かう。
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