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家に着くなり、少女は再び騒ぎ出す。
「まーぐーろ食べたーい!!まーぐーろー!!」
「少し待て。今、皿用意するから」
恥じらい、というものはないのか、ソファーで仰向けになって手と足をバタつかせる。腰から出る尻尾も、バタバタと動く。
「あ、ご主人様。タバコは?」
「…………すまん、忘れてた」
少し沈黙した後、正直に答えると、少女は目に涙を浮かべ、暴れ始めた。
「うわーーん!!タバコー!タバコ吸いたーい!!ご主人様、買ってきてよー!!」
「待て。今、皿を洗って――」
「皿なんてどうでもいいからタバコー!!」
「分かった。じゃ、夕食が遅くなるが、今から買いに――」
「まぐろも食べたーい!!今すぐー!!」
「……じゃ、ぱぱっと夕食準備するから先に食べてろ、カオリ。その間にタバコ買ってくる――」
「ご主人様と一緒に食べたーい!タバコ吸いたーい!まぐろ食べたーい!」
「……さて、どうしたものか」
今、俺が抱えてる込み入った問題。
それは、この状況でも、飼い猫が人間になったことでも、その元猫がワガママなことでもない。
俺や、唯一飼い猫に会ったことのある直子がタバコを吸わないにも関わらず、なぜ人化した飼い猫が愛煙家になったのか。
この問題は、俺を悩ませてならない。
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