3/10
前へ
/10ページ
次へ
それから一年、僕は母さんに出掛けると言ってあかねの家に来ていた。 マグカップのふちに薄い口を付けてずるずるとコーヒーを飲んでいたら、僕の思考を読み取ったかのように彼女は言ってきた。 「それならミルク入れれば良いじゃない」  僕は若干不機嫌になりながら言い返す。 「そういう問題じゃない」  少しの沈黙の後、彼女は背を向けたまま「ふーん」と呟いた。もしかして怒ったかな。それでも僕は背を丸めてコーヒーの残りを飲む。どうしてだか、彼女の家でブラックコーヒーを飲むことが癖になっていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加