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あかねが前のソファにどかっと座る。油断していた。
「なに泣いてんの」
カップに顔を突っ込む。コーヒー豆の香りと湯気が顔に降りかかる。熱さで舌がやられ、むせた。あかねは馬鹿にするような、哀れむような目つきで見下している。
「泣いても良いけどさ、」
見せつけるように煙を天井に向かって吐く。健康的な太ももの奥に、パンツが見えそうだ。
「私の前で泣かないでよ」
はっとした。泣いている顔を晒すのも厭わずに、顔を上げた。僕が見ているのに気づいていないのか、敢えて無視しているのか、横を向いてタバコを吸い続けている。僕は馬鹿だった。この子の、タバコを吸っている姿を見て泣くなんて。しかもキャミソールを着ている時に。
「ごめん、もう帰るよ」
牛乳の入っていないコーヒーを飲み干して、家を出た。
今、彼女は泣いているだろうか。
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