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「わたしはやれます」  ミチルの声だった。滑り落ちた塹壕のなかから身体を引き上げてくる。 「肩に被弾して左腕は動きませんが、あとはだいじょうぶです。電撃が止んだので、戦闘に復帰します」  カケルがほっとしたように質問した。 「よかった、お姉ちゃん。電気ショック痛かった?」 「うん、悲鳴をこらえるのに歯が欠けるかと思った。カケル、目にもの見せてやるわよ。スポッター現状復帰します」 タツオは頼もしく近衛(このえ)四家第二位の双子の背中を見た。ジャクヤが叫ぶ。 「敵、第3波突撃開始した。同じく4分隊24名」  あと何分この陣地はもつのだろうか。タツオは頭に浮かんだ疑問をすぐに否定すると、高らかに叫んだ。 「3重の弾幕を張れ。各自自分の敵を見定めろ。距離を誤るな。撃て!」  北不二演習場の大地には戦闘中死亡を示す深紅の軍服を着た敵兵の身体がごろごろと転がっている。午後の秋風は肌を刺すように冷たかった。
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