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北不二演習場初の戦闘訓練は定刻どおりに開始された。タツオたちが掘った塹壕(ざんごう)から敵陣までの距離は250メートル。タツオは10倍の双眼鏡で敵陣の様子を確認した。
「敵の塹壕は20ヵ所。それぞれ6人ずつ隠れている」
クニが軽機関銃のマガジンを運びながらいった。
「くそ、なんだって訓練用のレーザー銃の弾を実物と同じ重さにするんだよ」
タツオはクニを無視していった。
「今回の訓練の目標は敵に最大限の損害を与えて、時間を稼ぐことにある。各自冒険は慎め。この塹壕でこらえて、粘り抜くぞ」
「はい」
6人の返事が揃(そろ)ったところで、敵陣に動きがあった。自動小銃の銃口が突き出され、こちらの塹壕に向けて一斉に射撃が始まる。戦闘経験豊富なソウヤがいった。
「援護射撃だ。最初の突撃がくる。80式発射準備完了」
腹這(はらば)いになって、おおきな機関銃を抱えたソウヤの両脇には、装弾役のクニとテルが控えている。テルがいった。
「弾だけはいくらでもある。佐竹さん、頼んだぞ」
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