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ほぼ同時に3つの銃声が鳴ったように聞こえた。ひとつながりの長い発射音にも思える。走りながら指揮をしていた3人の下士官がその場に倒れていく。クニが叫んだ。
「おー、カケルちゃん、すごい腕だな」
指揮官を失った9名の兵士は突撃をためらい、その場にうつ伏せになった。同時にわずかな地面に起伏に身体(からだ)を潜め、自動小銃をこちらに向けてでたらめな発射を始めた。
塹壕のなかで身体を縮めた新任少尉たちは、顔を見つめ笑いあった。緒戦は順調だ。敵の突撃隊の第一波の3分の2近くを殲滅(せんめつ)した。クニがいった。
「このまま敵を全滅して勝てたりしてな」
副官に任命したジャクヤの声が響いた。
「敵、第二波くる!」
タツオは転がりながら塹壕前の小山をにじりあがり、ジャクヤに聞いた。
「兵力は?」
「前回と同じだ。24名による突撃」
「迎え撃て。軽機関銃と狙撃銃、それに自動小銃による三重の弾幕を張るぞ」
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