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 機関銃用のつぎの弾薬を用意しようとしたクニが中腰になった。わずかに頭が塹壕から出てしまう。その瞬間、透明だったクニの模擬戦用の軍服が深紅に染まった。 「くそっ、やられた。鳥居少尉、着弾。戦闘不……」  そのあとは言葉にならなかった。電撃を受けてクニは再び絶叫している。狭い塹壕のなかで先ほどまで元気だった仲間があげる悲鳴は胸に応えた。タツオはクニを無視して叫んだ。 「80式準備でき次第撃て」  テルが代わりの弾倉を補給する。ソウヤがつぎの掃射を開始した。先ほどまでのようにはうまく当たらなかった。第2波はまっすぐに突っこんではこない。4つの分隊それぞれがタイミングをずらしながら、短いダッシュの突撃を繰り返してくる。 「狙撃手、第2波の指揮官を狙え」 「はいっ」  カケルの返事に続いたのは、ミチルの悲鳴だった。 「萬満千留少尉、着弾。戦闘不能です」  萬家の双子の姉が真っ赤に染まった軍服で塹壕のしたに滑り落ちていく。 「お姉ちゃん!」
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