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「お待たせいたしました」
すっかり窓の外に奪われていた意識を慌ててテーブルに戻すと、ドルチェが既に待ち構えていた。
「おめでとうございます」
「あっ……ありがとうございます」
にこりと微笑み返す店員を、慌てた会釈で見送ると、視線は目の前に置かれたプレートと北方を忙しなく行き来する。
「あ、あのっ」
「誕生日、今日なんですよね。おめでとうございます」
しどろもどろで礼を繰り返す菜乃佳に、北方は相好を崩す。
……初めて笑った。
北方は常に穏やかな表情をしており、時折微笑も見せていたはずなのに、菜乃佳はなぜだかその瞬間そう思った。
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