雨待つ夜

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……っくちゅん。 かわいい人が漏らせば、かわいく聞こえる奇跡もあるのだろうが、片時も離せないティッシュとお友達状態の美人でもないいい歳の女が発しても、頂けるのはせいぜい冷ややかな視線くらいのものだ。 ぅあぁぁぁ……。 ため息も満足に出せないほど詰まりきった鼻から余計なものが出ないよう、菜乃佳(なのか)は新しいティッシュを束で取り出して、鼻に当てる。 ……ポケットティッシュ、山ほど持ってきておいて良かった。 なんで毎年こんな思いをしなきゃならないのかと、ほとほと嫌になる。 「花粉症ですか?」 ええ、と答えたつもりが濁音付きで、菜乃佳は小刻みに頷いて是を示す。深く項垂れると鼻が垂れてきてしまうので、注意が必要だ。 「辛そうですね」 淡々とした調子ながらも、続けて話しかけられて、菜乃佳はようやくそこで相手の人物をちゃんと見た。ええと、確かこの人は。
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