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ぼんやりした月も、ぼんやりと自分を見下ろしている気がすると、ふわりと足が軽くなった。
暖かいのか冷たいのか狭間の大気も、雨が降り出しそうで降らない湿度も、僅かな刺激で散りそうなのに枝にしがみついている花弁も、止まりそうなほどゆっくりとした歩みも、すべてが曖昧だ。
いつもは敬遠してしまいそうなそれらを、好ましく感じる。
しばらくそうして歩き続け、車道を渡ると北方は、あっと声を上げた。
「……すみません、閉まっていました」
シャッターの下りた店先に二人並んで佇む。
いつもは、この時間でもやっていたのにと言う北方の言葉通り、シャッターに書かれた営業時間を見ると、週末は深夜まで営業しているらしい。しかし、本日月曜日の営業時間は、少し前に終わっていた。
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