夏揺す嵐

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夜桜見物の夜に連れて行かれたトラットリアの近くには、洒落た店構えの飲食店が軒を連ねており、後日、何軒かに連れて行かれた。 北方とは、週に一二度、仕事帰りに夕食を共にするようになっていた。もちろん、あの夜に行きそびれた珈琲店で、北方の薦めるブレンドも味わった。 しかし、休日に揃って外出するというのは、初めてだ。 会社帰りに軽く飲みに行くくらいなら、異性とはいえ仲の良い同僚ならよくあるものだ。同期だったり、職場の先輩後輩だったり、菜乃佳もその時々で週に何度も一緒にランチやらお茶やら夕食やらを共にしてきた人たちがいた。土日に皆でバーベキューやキャンプに行ったこともあるし、女性の先輩と二人で買物や観劇に行ったこともある。 だから、それらと変わらないものと思おうとした。そう思っている時点で、差異を感じていることには無論気づいていたが、まだ深くは考えたくなかった。
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