夏揺す嵐

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周囲に立ち並ぶ他の美術館や博物館の案内も見たが、あまり興味を引かれないし、どれも混雑していた。 土曜の朝九時過ぎだというのに、急に目的を失ってしまって立ち往生していると、スマホを弄くっていた北方が、菜乃佳に画面を差し出した。 「印象派とは、だいぶ違うけれど」 菜乃佳は行ったことのない、現代美術館だった。著名な建築家が建てたという建物にも興味を引かれ、行ってみることにする。 ほんの時々、美術館に足を運ぶことはあっても、現代アートはほとんど見たことがない。日本人に大人気の印象派だったら、何度か展覧会に足を運んだこともあるし、美術の授業やテレビ番組などで薄っすらとした知識はあるが、これは予習もしていないのでお手上げだ。理解できるか不安だったが、北方は一蹴した。 「面白そうと思ったんだったら、それで良いんじゃないの」
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