628人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「あー、疲れた。」
朝の準備、お坊さんの迎え、
法要が無事終わり、今は、夜の宴会が始まっている。
ひい婆ちゃんが死んでから、何年が経ったのだろう。
この法事が何回忌に当たるのか、僕は知らない。興味もなかった。
僕は視線だけを動かして、親戚たちを見た。
喪服を着た親戚のおじさんやおばさんが会話に花を咲かせている。
初めは故人の死を悼んだり、ひい婆ちゃんの話をしていた親戚たちだったが、
すぐにその話も終わり、お互いの話へと変わっていく。
法事とは名ばかりで、喪服を着た親戚の飲み会だ。
故人の冥福を祈るというよりも、
互いの近況報告をしあっているようにしか見えない。
大人はそれが楽しんだなと、冷静な目で見ていた。
「圭一、たくさん手伝ってくれてありがとうね。もう席をはずしてもいいよ」
空になった瓶ビールを運ぶ母にそう言われ、僕は「うん」と頷き、広間を出た。
最初のコメントを投稿しよう!