第一章 

5/22
前へ
/35ページ
次へ
京都は盆地だから夏は暑い、と聞いたことがあるのだけれど、 今日の京都の夜は、東京よりもひんやりとしている気がした。 僕は婆ちゃんの家を出て、町のほうへと向かう。 婆ちゃんが住む嵐山は、川と山に囲まれた緑豊かな町だ。 お寺が多いこともあり、この辺りは、観光地としても有名だ。 幼い頃から何度もこの町に来ている僕は、観光客が去った後の、夜の嵐山で遊ぶのが好きだった。 この日も幼い頃を思いだし、夜の町を散策していた。 渡月橋の上に差しかかると、大堰川がゆったりと流れていくのが見える。 その奥には、一枚の絵のような優美な姿の嵐山。 思わず、 ライトアップされた橋の上で立ち止まり、遠くを見ると 小さく京都タワーが見えた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加