第一章 

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帰って来たんだな……と思う。 久しぶりなのに、とても懐かしく 穏やかな気持ちになるのが、この町の良さだと思う。 群青色の夜空に、ぽっかりと大きな満月が浮かんでいた。 色は、白くも青くも見える。 雲の隙間から月光が伸びてきて、僕の前に道を作る。 月光が作る優しいライトに導かれる様に、僕は橋から続く道を北へ北へと歩いた。 緩い坂道になっていた。 左手にお寺があって、 5体並んだ小さなお地蔵様がにっこりと微笑みかけてくれる。 右手に小さな駅が見えた。 その前には、京都らしい和風のお土産屋さんが所狭しと並んでいる。 すでに閉店しており、グレーのシャッターが閉まっていた。 5時を過ぎるとこの辺りは、たちまち人がいなくなる。 僕は、人通りがなくなった緩やかな坂道をひたすら歩いた。 坂を登りきると、道が細くなっていった。 右、左、右と、選びながら僕は歩く。 知らない道は、少し ワクワクする。
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