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高木は釣り竿を横に置くと、バッグからステンレス製のマグボトルとプラスティックカップを取り出した。
ボトルの蓋を開けると珈琲のいい香りが漂ってきた。
カップに注いだ珈琲を差し出した高木は西村をじっと見つめた。
西村はカップを受け取らなかった。ただ高木を睨んでいた。
高木はため息をついて視線をそらすとカップの珈琲を草むらに捨てた。
それから、釣り竿を片づけ始めた。
西村は釣り糸を垂れたままただ座っていた。
クーラーボックスを担いだ高木は、悪いが先に帰ると歩きだし、ふと立ち止まり、
すまんが一周忌には行けないと言った。
西村はただじっと川面の見つめていた。
行こうとする高木の背中に、
「他に何か言うことはないのか」
と乱暴に言葉をぶつけた。
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