苦い煙草

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「……なにもない」 「じゃあなんで呼び出したんだ」 「すまなかった」 「何に謝っているんだ」 「……すまなかった」 「待て。一発殴らせろ」  西村が立ち上がると、高木はクーラーボックスを置いた。  拳を握りしめ、頬を殴ると、高木は尻餅をついた。  殴った拳が痛かった。  高木は何も言わなかった。  そのことが、高木と由貴の関係を証明していた。    立ち上がると、高木は頭を深く頭を下げ、クーラーボックスを担いで去っていった。  一度も振り向かなかった。
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