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「ありがとう鈴木さん。何だか無駄に自信がついてしまったかも。ますますアナタが手放せなくなりました」
そう言って私の手を握りしめて柔らかく微笑んだ克巳さんに、胸がきゅんとしちゃったんだよなぁ。
そして今――隣にいる克巳さんの笑顔を見て、何となくだけど当時のことを思い出してしまった。
幸せって、どこから沸いてくるか分らないものなだなぁって。
「来月の理子さんの誕生日、プレゼントは何がいいかなって実は悩んでいるんだ。会社では、ピアスつけていても大丈夫?」
「はい。華美なモノでなければ、大丈夫です」
本当は指輪がいいなんて、ワガママは言えないよね。
「理子さんはショートカットで耳をいつも出しているから、ピアスがとても似合うだろうなと思ってね。それじゃあ、華美じゃないものから選んでみるよ。楽しみにしてて」
「はい、楽しみにしてますね」
克巳さんに向かって満面の笑みで返事をしたというのに、ちょっとだけ顔色を曇らせる。どうしたんだろう?
「付き合ってすぐに、指輪は重いかなと思ったんだ。もう少ししたら、プレゼントするから」
「えっ!?」
どうして指輪が欲しいって、分ってしまったんだろう?
「理子さん、どことなく物欲しそうな顔をしていたから、そうなのかなぁと思ったんだけど。違っていた?」
「ええっ!? そんなに顔に出てました? 私ったら、ごめんなさい……」
「いやいや、そういう奥ゆかしいトコも、結構可愛いなぁと思ったんだ。安心して」
俯いた私の頭を、優しく撫でなでする。その手がやけに温かくて、自然と癒されてしまった。
「指輪は、一緒に買いに行こうか」
「はいっ!」
その言葉に思いきって顔をあげて、笑顔で返事をしたときだった。
「リコちゃん、み~つけた!」
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