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声のトーンが、自然と落ちてしまう。逢ったことがない女を、よく食事に誘えるよなぁ。
『それは俺も同じです。ガッカリしないで下さいね』
こうしてお互い、ドキドキしながら初対面をした。
「はじめまして、相田 克巳です。年齢は31歳。趣味はドライブで特技は――何だろうな、ハハッ。鈴木さんってやっぱり想像以上に、可愛らしい感じの方で嬉しいです。さぁ行きましょうか」
私を見た、第一声の克巳さんの言葉。
『お前って超ガサツだよな。可愛らしさがひとつもない』
そんな酷いことを言われて前のカレシに振られていたので、かけられた言葉は素直に嬉しかった。
勿論、初対面だから頑張ってしまった自分もいるけれど、そこのとこをひっくるめて認めてくれたのは嬉しい。しかも克巳さんって想像通り、余裕のある大人の男の人って感じ。
背が高くて細身で、スーツがビシッと決まっていて。さらさらでクセのない黒髪と、ちょっとだけ細めの瞳に、すっと通った鼻筋――
「あ……、もしかして、ガッガリさせてしまいましたか?」
細い瞳を更に細めながら、優しい眼差しで私の顔をじっと見つめてくる。それだけで、無性にドキドキしてしまった。
「ちっ、違います。あのすっごく格好いいのに彼女がいないのが、逆に不思議だなぁっと思ってしまって」
「そんな、格好いいなんて。見掛け倒しの悪いヤツかもしれませんよ。前の彼女には、優しすぎてイライラすると言われてしまって……。案外、頼りないのかもしれません」
寂しそうに苦笑いする克巳さんに、何てバカなことを言ってしまったんだと激しく後悔した。
「相田さんは、頼りない人じゃないです! 私が仕事でミスしたときもすぐにフォローして、しっかり支えてくれたじゃないですか。私、優しい男の人が大好きです!」
勢いに任せて言い放ってから、口元を押える。まるで愛の告白状態だよ――
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