始まり

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それは突然だった。 いつものように家に帰ると玄関には見たこともないような男の人が私を待ち構えていた。 男は私に逃げる隙も与えず取り押さえ、そのままリビングへ連れていかれる。 「んっ…っ!!!!!!」 そこには血だらけの両親が縛られて倒れていた。 口を塞がれ、声が出せない。 お母さんもお父さんもまだ息はある。 「さて、行くか。」 一体どこに? ただただ恐怖が全身を支配して、されるがままに目隠しをされ、手足を縛られて車に載せられた。 状況が理解出来ない。 なんで、こんなことになっちゃったの…? しばらくして 車から下ろされると、目隠しが取られて自分が崖の淵にいることが分かった。 「んっ…っ!!!」 怖い。 私、この人たちに殺されるの…!? 「やめてくれ!美佳には手を出さないでくれ」 お父さんの声だ 後ろには、お父さんとまだ意識のないお母さんの姿が目に入った 「大野くん。君がおとなしくこの子を渡してくれればこんなことにはならなかったんだよ」 「お願いだ、その子だけには」 「何を今更。お前らはここで死ぬ。もちろん、この子もここで死んだことになる。」 どういうこと…? 「お前らはこれから一家心中するんだよ。」 「お願いだ!俺はどうなってもいい!」 「それじゃあ意味が無いんだよ、時間が無い、無駄話はもうやめよう」 男がぐったりとしているお母さんを抱えた。 何をするかは理解できる。 「んっ!!!んんんんっ!!!」 お母さんっ!!お母さん!!!! 「やめろっ!!!やめてくれっ!!!」 叫ぶことも、そばにいくことも出来ないもどかしさか、恐怖からか体が震え出す。 そのままお母さんは、何の抵抗もせず崖から落とされた。 遠くで海の音がする。 もし、生きていたとしても、手足を縛られた状態で海に落とされたら…。 涙で視界が歪む。 状況に頭がついていかない。 「次はお前だよ」 「お願いだ!!!やめてくれ俺は死んだってどうってことない子供だけは…」 「もうこれは決定事項だ」 「美佳…、ごめん。ごめんな、こんな父親のせいで」 お父さんの声を聞いたのはこれが最後だった。
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